2024年4月29日月曜日

やさしくわかりやすく、なお面白く

  【むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに】

 日本を代表する小説家であり劇作家・放送作家である井上ひさしさんの言葉である。
なんて素晴らしい言葉なのだろう。何度読んでも「そう!そう!そう!」とうなづいてしまう。
ピアノ指導者として、母親として、若者の道しるべ的存在である社会の一員としてどの部分も共感でき、理想とする生き方ではないかと思う。
生徒に、奥深く緻密な音楽の世界を、やさしくわかりやすく、なお面白く導びいているだろうか?

 今コンクールに向けて奮闘中である。今年は初チャレンジの生徒が多い。
ピアノが好きだから、上手になりたいという気持ちでレッスンに来る。
そのためには基礎力が必要である。基礎力というのは技術だけではない。
読譜力、ソルフェージュ能力、音楽理論の理解、響きに関する養われた耳など総合力なのである。
そのようなことは露知らず、レッスンが始まって初めて開眼するのが常である。
その時が人づくりのスタートなのである。
指導者の導きに真剣に向き合い、どんなに時間が掛かろうと粘り強く取り組めるのか、以前に習ったこと、経験したことを活かすことができるか、習得するために創意工夫をしているかなど自分と戦い始めた。苦しむ生徒たちに井上ひさしさんの言葉のように接しているだろうか・・・。自問自答する毎日である。

本日も部活で地区大会の直前という中学生のレッスンをした。
ここ1ヶ月くらい様子を見ていたが、気持ちは部活の方に向いている。
ピアノはどうしたのかなぁ・・と彼女の中から遠のいていく感じだった。
なのにコンクールにチャレンジすると言い、選んだ曲が#が7つ付いている調。
ド〜シまで全て#が付いているのである。慣れればそうでも無いのだが、彼女にとっては超厄介のようである。信じられないほどリーディングミスが多い。

本日はやさしく彼女に寄り添い90分掛けて譜読みをした。
すると彼女から笑顔が出てきた。難解であった譜読みが紐解かれ始めたようで嬉しそうだった。
私もそも笑顔を見て、少しピアノに心が戻ってくるかも・・と思えて嬉しかった。
叱咤激励するばかりでなく、やさしく寄り添い、生徒たちの苦労を共に超えてあげることも必要だと痛感した。

次回のレッスンは大会の翌日である。さぁ彼女はどんな状態でレッスンに来るだろうか?
期待して待っていよう。指導は生徒と根比べのようなもの。待てるかが重要。
しかしコンクールだけは間に合わないと大変。
そのタイミングがバランスが難しいのである。
今でギリギリ・・・